部活動などでテスト勉強会に参加できない場合、
別の日に振り替えて来てもらっています。
ある日、数学が苦手な生徒がその振替で自習室にやって来ました。
前回の定期テストは散々な結果でした。
演習量が不足していると言えばそれまでですが、
一問にかける時間がどうしても長くなってしまい、
問題どうしの関連性を見つけられず、
まるでバラバラの孤立した問題に見えているようでした。
だから私はその生徒に、
「あれこれ手を出すのではなく、
次回テスト範囲が発表されたらこちらで問題を絞るから」と伝えました。
そして実際にテスト範囲が出たあと、
私は問題集を見直し、やるべき問題と、余裕があれば取り組んでほしい問題、そして今回はやらなくてもいい問題を分けて示しました。
塾講師として二十年以上、生徒たちに向き合ってきました。
世の中的には「ベテラン」と呼ばれるのかもしれません。
けれど私自身は、その言葉にどこかしっくりきません。
というのも、私にとって「ベテラン」という響きには、
どこか落ち着いて成長を終えた人、あるいは新しい伸びしろが少ない人、というニュアンスがあるからです。
私はまだまだ発展途上です。
これからも試行錯誤を続け、
昨日より今日、今日より明日と成長していきたいと思っています。
ただ、そうやって歩みを続けるなかで、
経験を重ねるほどに強く感じることがあります。
それは、生徒に「あれもやれ」「これもやれ」と指示を出すのは簡単だということです。
そんな言葉はいくらでも並べられる。
けれど、本当に必要なのは、やるべきことを選び抜いたうえで「これは今やらなくていい」と言える勇気と判断です。
その一言を伝えられるかどうかにこそ、
二十年の積み重ねが活きていると感じています。
「やらなくていい」と言えるのは決して無責任ではなく、
むしろ限られた時間の中で最大限の成果を上げるために必要な選択です。
そして、その判断を迷いなく伝えるためには、
過去の多くの経験と積み重ねが欠かせません。
勉強に費やせる時間は限られています。
だからこそ「何をやるか」だけでなく「何をやらないか」を見極めることが、結果を左右します。
私はその選択を生徒の代わりに背負うことが、
講師という仕事の一つの大切な役割だと考えています。
「やれ」と言うこと以上に、「やらなくていい」と言えること。
その一言にこそ、講師としての責任と、
今まで積み重ねてきた経験の価値があると信じています。